斜め上から目線

アウトプットが大切なんですって奥さん

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まずは手近、かつあまり怖くなさそうなところから攻めるべきではないだろうか。

みつけ「リビングなんてどうでしょう」

田ノ中「............」

おや?

田ノ中さんは少し驚いたようにこちらを見つめている。

みつけ「あの......」

田ノ中「ああ、うん。ええとリビングだっけ?いいんじゃないかな」

少しぼおっとしていたのか、どこか適当に返事をしているように思える。

玄関を入って右側の扉がリビングだ。

資料に添付された地図によると、リビングとキッチンは繋がっており、更にキッチン側の扉を開けると階段下の物置に繋がるようになっているようだ。

向かって左の扉は誰かの個人部屋であるようだった。

目の前に階段が右側の壁と接着するようにあり、左を抜けると水場があるらしい。

......広いなあ。地図を見た感じ一部屋一部屋が大きい。

ここに住んでいたのは家族だったらしいが、なかなかどうしていい暮らしをしていたのではないだろうか。それに比べてうちの家と来たら、どっかの匠に改造して欲しくなるほど窮屈である。

 

田ノ中「みつけちゃんは随分と長考だねえ」

気がつくと田ノ中さんは私が持っている地図を覗き込むように、こちらの視界へ入ってきていた。近い。

みつけ「え?あ、すいません。ちょっと思いを馳せていたというか、なんというか......」

田ノ中「いやあ、大丈夫だよ。ただ、なんというかね......待つこと自体は問題ないんだけれど、突然喋られるとびっくりしちゃうね。俺意外とスリラーはダメかもしれない」

霊と話せるみたいなことをほざいておいて、何を言っているのだろうか。

田ノ中「ところでみつけちゃん、今日は何日だっけ?」

みつけ「田ノ中さん、それさっきも聞きましたよね?11月6日でしょう?」

田ノ中「......そうだったね!そう、今は11月6日だ。少し寒くなってきたね。みつけちゃんはその格好で大丈夫かい?俺はスーツだから平気だけど」

何をいっているのだろうか。

みつけ「秋なんだから、ちゃんと秋服着てますよ。なんか寒暖差激しいですけどね、最近」

田ノ中「そうかい。それならいいんだ」

 

ノブを回して少しだけドアを開ける。

暗い。

 

みつけ「たた田ノ中さん......暗いです」

田ノ中「みつけちゃん、落ち着こうか。空き家で電気が点いていたらそれこそ事件だよ。ここはとっくの昔に電気が通っていないからね、ほら、懐中電灯とペンライト。たくさんあるし電池の替えもあるからバンバン使ってくれたまえ!さあ、準備のいい俺に感謝しながら探索を始めようか」

みつけ「くっ!ありがとうございます」

 

なんということだろう。あまりにも当たり前だったがここは空き家である。電気もガスも、勿論水も通っていないのだ。さっきまでは玄関にいたから、外からの光で先が見通せていたが......。ここから部屋のなかを探索するとなると、人工の光だけが頼りになりそうだ。

窓を開けて陽光を取り込めばいいのではと思っていたけれど、現場保存という点で見るとあまりよろしくない行為である。

お日さまの恩恵を今になって感じながら、私は泣く泣く懐中電灯のスイッチをつけた。

 

みつけ「う~ん......汚い、ですね。こっちは机と、椅子と、ああテレビ......。典型的なリビングですね。テレビ結構前の型っぽいですけど」

田ノ中「家主がいたころとなると何年前のものになるのだろうね。ちゃんと点いたら意外といい値段するかもしれないよ。まあ、電気は通ってないんだけど......おや?」

 

お互い別方向に光を向け、どんな状態なのか探り出す。なんとなく泥棒のような気分だ。

 

田ノ中「みつけちゃん、みつけちゃん、ちょっとおいで」

みつけ「なんですか?」

 

光を田ノ中さんの方へ当てると、端で緑のスーツから伸びた手がおいでおいでをしている。

田ノ中「見てごらん、ちょっと興味深いものを見つけたよ」

みつけ「それは......」

 

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