斜め上から目線

アウトプットが大切なんですって奥さん

8.5

みつけ「これ......全部ゴミ袋ですか?」
田ノ中「ああ。こっちはキッチンみたいなのだけれども、どうにもこいつらが邪魔でね。重ねて置いてあるものだから......。ちょっと手伝ってよ、俺の懐中電灯持ってて」
みつけ「わかりました」

少し離れ、二つの光で満遍なく辺りを照らす。
足元が見えたのを確認してから田ノ中さんは目の前のゴミ袋をひょいと抜き出した。
抜き出した?

どさどさ、どさ。

みつけ「なにやってんですかー!!」
田ノ中「わっわっ。あれ......なんで全部崩れたんだ」
みつけ「中段抜いたらそりゃ崩れますよ!ジェンガやったことないんですか!!」

忘れていたが、田ノ中さんは何かやろうとするとそれしか目に入らない。今のも多分『取りやすそうなところから取っていこう』なんて考えて、何も考えず中心に手を伸ばしたのだろう。クリティカルアンポンタンなのだ。

こっちにまでゴミ袋が転がっているじゃないか。中身はカップラーメンやらの空き箱ばかりだったので、特に被害はない。ただただリビング中にゴミ袋が飛んでっただけめある。こんなことなら田ノ中さんが照らして私が整理すればよかったのでは?というか現場保存はどうなったのだろうか。

みつけ「田ノ中さん、とりあえずキッチンへ入れそうにはなりましたね」
田ノ中「うん......。これを元のように積むのは......考えるのはやめようか!......おや、みつけちゃんのところにまで転がっていったのか。すまなかったね。なんだか全部軽い感触だったから怪我はしていないだろうけど、気分が悪いだろう。俺が抜いた袋、全部中身がカップラーメンやら焼きそばやらの空き箱だったよ。上の方も感触は軽かったから似たようなものなのかもしれない」

おや。
みつけ「私の方に飛んできたやつもカップラーメンばっかりでしたよ」
田ノ中「なんだって?」

二人してゴミ袋を漁った結果、わかったことは3つ。
ひとつ、ゴミ袋の8割がレトルト食品やらカップ麺やらのゴミで構成されていたこと。
ふたつ、消費期限がどれも似たような期間であったこと。
そしてみっつめ、夏だけの期間限定品が混じっていたこと。

つまり。

田ノ中「これらのゴミ袋は全て2018年の夏に膨らまされたものだということだね。いやいやまったく、栄養価とかカロリーとか少しは気にするべきだと思うんだ。しかもあの短期間でこの量......。一度にどれだけ食ったんだろうね」
みつけ「......やっぱりそうなるんですか?でもおかしくないですか?ここはもう空き家なんですよ。私達が来た理由だって、その、騒音の理由である幽霊探索なわけでしょう?これじゃあまるで......」

生きた人がいたみたいだ。

そう言ったのは、私と田ノ中さんどっちだっただろう。
わからなくなったのはガタン、とキッチンで物音がしたからだった。

みつけ「!」
田ノ中「はあ?おかしいな。ここには何もないと感じていたんだけど......」

田ノ中さんはなんでもないようにキッチンの方へ明かりを向ける。
奥に見える冷蔵庫、手前の水場、反対側の食器棚。
何もないように、見える。