あめにうたえば
面白いことがあったので書き留めておこうと思う。
今日は雨が降っており、私は傘をさしてバイト先へ歩を進めていた。
まあまあの降水量で気が滅入りだした頃、大きな水溜まりに出会った。
進行方向目一杯に広がっていたそれはどうしようもない。バイトの時間も迫っており、焦っていた私は思い切りその中へ足を踏み込ませた。
するとどうだろう。落ちたのだ。
滑って転ぶならわかるけれど、そのまま前のめりに落ちていった。
私はジェットコースターなどの絶叫系が苦手なので思わず思考停止してしまったが、おそらくそれほどの高さはいっていなかったのだと思う。
本当に驚いたときは声も出せない。
気がつくと私は水色のゼリーのような空間の、へこんだところに着地していた。
音が反響して、だんだん小さくなっていく。
なんだこれは。
こんなところにきて最初にする行動といえば「なにこれ......」と主人公らしく辺りを見回すことだようが、私は真っ先に鞄が濡れていないか、というかスマホが水没していないかを確かめた。してなかった。ほっ。
先ほど水色のゼリーのような......と比喩したのには理由があって、透明な水色に囲まれていたのは確かなのだがぶっちゃけよく見てなかった。のだ。うん。
私が見たのは鞄の中身と、上だった。
見上げると水溜まりがガラス張りの天井のようになっており、道端の草花がやたらとでかく映っている。
道路になった気分だった。
立っているのに寝転がっているような視点で混乱してしまう。
私はなにも考えず天井へ手を伸ばした。
瞬きはしていなかったのに、何があったかわからなかった。
雨の音が大きくなって、伸ばした手には傘が握られていて、目の前を車が通りすぎる。
元に戻ったのだ。大きな水溜まりは過ぎており、無意識に通りすぎていた模様。
私はそのままバイトに行って、帰って、なんやかんやしたあとこの文章を書いている。
あんな変な出来事に遭ったのだからもう少し詳細に書きたいものだが、覚えていないものは仕方がない。
大きな水溜まりを通ったのに靴が濡れなかった。それが今日あったことだ。
なんちゃって