斜め上から目線

アウトプットが大切なんですって奥さん

4.5

私は気になって、更に問いを重ねた。
みつけ「もう七夕から一ヶ月ほどですけど......ずっと音は鳴っているんですか?」
伊沢「大学があるので日中がどうかわかりませんが、夜は時々。人の声と、階段を昇り降りする音がたまにしていて。でも、そういうときはさっき言った金属みたいな音が消えるんです」
伊沢さんの発言に田ノ中さんは眉を上げた。
田ノ中「金属みたいな音っていうのは、それはもう金属の音だと思いますけど......いや、違うかもしれないね。金切り声っていうもの。ああそんなことはどうでもいいんです。その、金属みたいな音ってやつは生活音のしないときに流れているんですか?BGMみたいに」
伊沢「隣家から聞こえる微かな音なので、はっきりは言えないんですけど......よくしてるんだと思います。他の音が聞こえて、それではじめて『あっ止まった』って思いましたから」
田ノ中「......金属音以外に普段からしている音は?他にありませんか?」
伊沢「いえ、わからないです......」
金属音以外に普段からしている音......。
田ノ中さんは何が言いたいんだろう。
というか、なにやら奇妙な話になってきた。空き家に誰かが住んでいたとしたら四六時中生活音がしているはずだ。
けれど、その音は時々しか鳴らない。
つまりそこに人が住んでいるのは......時々?
意味がわからない。
それに金属音の正体も気になる。
包丁でなにかを刻む音とかだったら、聞き覚えがあるからそのように表現されるはずだ。
普段聞けないなにか......。ただの事務員にはさっぱりだった。田ノ中さんはなにかわかったんだろうか?
私はそう思いながらちらりと田ノ中さんの方へ目を向けた。
田ノ中「......??なあに、まだ質問したいことがあるのかい?仕方ないなぁ~~~~伊沢さん宜しいですか?」
伊沢「あ、はい、もちろん」
は?全然違いますけど。
そう言おうとしたけれど、伊沢さんの真剣な表情に口が閉じる。
解決してほしくて相談に来ているのに、話題が進展しないのはちょっと不安かもしれない。
いやいや、でも今回のことでもうわからないことなんてないっていうか、わからないことしかないっていうか。
みつけ「えっああ......あー、そうですね。その、ほ、他に相談した方とかいらっしゃいますか?」
伊沢「え......」
田ノ中「............」

馬鹿~~!!警察に行って探偵社に来たって言ってた~~~~!!

みつけ「あ、すいません、いやあハハ、あの警察とウチでしたよねハハ、ハハ」
伊沢「いえ......あ。大学の友達とか、彼氏には相談しましたよ。時期が時期なので大体の人に怪談扱いされて終わりましたけど」
田ノ中「ということは、伊沢さん以外に隣家の生活音を知っている人がいるということですね?本当のことだと思っているかには関わらず、ですけれども。いつ頃お話されたんです?」
伊沢「ううん、友達には警察に行ったあたりですぐに。講義が一緒なので。彼氏......は、怖いものが苦手で。私が怖いのに、彼なんか失神しちゃうと思ってしばらくは言いませんでした。けど流石に不気味で、7月の下旬頃に相談したのを覚えています」
......どれだけビビりなんだろう。
伊沢「思ったより真面目に聞いてくれて、それでちょっとホッとしました。警察以外に相談できるところがないか調べてくれたり......。あんまり役には立ちませんでしたけど、それがきっかけでここを知ったんです」
みつけ「へえ......」

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今回は選択肢なし。ちょっと長いので分割。

その代わり軽いキャラクター紹介を挟みます。


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照島みつけ

大学生のバイトちゃん。

まあまあ雑に生きてるけど、人によく共感し相手の立場で物を考えられる女の子。

田ノ中はよくわからんと思っているので田ノ中の立場になって考えるのはできません。

探偵社でバイトする前はコンビニで働いていました。

 


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田ノ中今真

胡散臭い探偵のお兄さん。

着てるスーツはバッタとか言われてるけど、実はお高い一級品。

周りの探偵からは『勘当された良家の坊っちゃん』『頼むから出ていってくれって大金渡されたんじゃないのか』『人の形をしたスピーカー』『猿がシンバル叩いてるオモチャ並に黙らない』などとまあまあの暴言を叩かれています。

 


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徳臣透

みつけちゃんといっけなーい遅刻遅刻した人。真面目だけど神経質なので、ちょっと損しています。

全然出てきてないので書くことがありません。

 

今回はここまで